ペスタロッチーの貧児・孤児教育をめぐって―近代スイスの児童福祉施策― [Not invited]
光田 尚美
日本ペスタロッチー・フレーベル学会第29回大会 2011/09 常磐会学園大学 日本ペスタロッチー・フレーベル学会第29回大会
ペスタロッチーの貧児・孤児救済事業の先駆性や卓越性を、時代の児童福祉施策の成果に照らして考察した。貧児・孤児への公的福祉は、矯正教育と工場労働を特徴とする「刑務所の孤児の部屋」を中心に行われていた。「刑務所」機能は後に分離されたものの、その方針の重点は、不景気の時代には自立経営を支える強制労働に、また好景気の時代には施与に置かれるなど、教育的効果は期待できるものではなかった。ペスタロッチーの取り組みは、子どものうちに自助の力を見出し、その力を陶冶することに力点を置くことによって、貧児・孤児の生活改善を図り、自立を支援するという意味での教育的な福祉施策であった。こうした特徴を近代の児童福祉施策の先駆として評価するとともに、教育の基盤に福祉的な視点が必要であることを示唆した。