日本学術振興会:科学研究費助成事業 奨励研究(A)
Date (from‐to) : 1997 -1998
Author : 三田村 邦子
本年度は昨年度の研究を踏まえ,LC/MSにおける誘導体化の有用性をさらに明らかにすると共に,生体試料中微量ステロイド分析に応用した.
1. ビタミンD骨格と選択的に反応するCookson型試薬(4-phenyl-1,2,4-triazoline-3,5-dione等)を用いてビタミンD脂肪酸エステルを誘導体化し,LC/APCI-MSに付したところ,正負両イオンモードで分子量関連イオン([M+H]^+又は[M-H]^-)のみならず特徴的なフラグメントイオンが生成し,抱合位置に関する情報も得られた.これは生体試料中ビタミンD代謝物の同定上有用な知見となり得るものであった.
2. 脳内ステロイドホルモンの一種であるプレグネノロン 3-サルフェート(PS)に着目し,まず標品PSをO-methylhydroxylamine,O-pentafluorobenzylhydroxylamine又は4-(N,N-dimethylaminosulfonyl)-7-hydrazino-2,1,3-benzoxadiazole(DBD-H)で誘導体化後,負イオン検出LC-ESI-MSに付し,その諸性質を精査した.その結果,いずれも[M-H]^-が基準イオンとして観察される上に,本イオンを用いる選択イオン検出において,誘導体化前に比し約10倍の高感度な応答を示し,誘導体化の有用性が明らかとなった.また,誘導体化率,後処理の簡便性,実試料に適用した際のクロマトグラフ的挙動を考慮した結果,上記の誘導体化の中でDBD化が最も優れていた.
3. 上記2の誘導体化法及び重水素化内標準物質[^2H_4]PSを用い,LC/MS(/MS)によるラット脳内PS定量法を開発し,実試料へ適用した.その結果,従来法(RIA等)による文献値(21±5 ng/g tissue)に比し,はるかに低値を示すなど,興味ある知見が得られた.