寺内 公一; 岡野 浩哉; 小川 真里子; 武田 卓; 安井 敏之; 日本産科婦人科学会女性ヘルスケア委員会
日本女性医学学会雑誌 (一社)日本女性医学学会 30 (4) 622 - 626 2185-8861 2023/07
日本の更年期障害治療における補完代替療法,とくにイソフラヴォン類とプラセンタ製剤の使用実態を明らかにする目的で,以下の検討を行った.日本産科婦人科学会女性ヘルスケア委員会では,日本の更年期障害治療の実態を把握するために,日本女性医学学会員の医師全員を対象として,2020年に質問紙郵送による調査を行った.本調査についてはこれまで全体の概要,および漢方薬の使用実態についての報告を行ったが,今回は補完代替療法,とくにイソフラヴォン類とプラセンタ製剤に着目した.調査票上ではイソフラヴォン類としてエクエル,プラセンタ製剤としてメルスモン・ラエンネックを列記し,その他は自由記載とした.得られた回答に基づいて各治療法の(1)現在使用率=現在使用している医師数/全医師数(%),(2)有効率=有効と考える医師数/現在・過去使用医師数(%),(3)有害事象経験率=有害事象経験医師数/現在・過去使用医師数(%)を算出した.1,532名より回答を得た(回答率43.5%).全体の現在使用率は,エクエル51.4%,メルスモン17.5%,ラエンネック7.2%で,エストロゲン製剤(41~86%)より低かった.有効率は,エクエル71.2%,メルスモン76.5%,ラエンネック70.9%で,エストロゲン製剤(89~95%)より低かった.有害事象経験率は,エクエル3.2%,メルスモン4.8%,ラエンネック1.2%で,エストロゲン製剤(6~17%)より低かった.月あたりの更年期障害患者数が増えるほど,エクエルとメルスモンの現在使用率と有効率が有意に増加した.イソフラヴォン類とプラセンタ製剤の現在使用率・有効率・有害事象経験率はエストロゲン製剤よりも低かった.患者数が増えるほど,これらの製剤を有効に投与できるようになる傾向が見られた.(著者抄録)