井上宏昭; 森田泰慶; 頼晋也; 角谷宏明; 大山泰世; 谷口康博; 田中宏和; 嶋田高広; 辰巳陽一; 芦田隆司; 松村到
臨床血液 58 2 138 - 142 (一社)日本血液学会-東京事務局 2017年
固形臓器移植後の免疫抑制療法は,骨髄異形成症候群(MDS)の発症リスクとなることが知られている。我々は,固形臓器移植後に発症した低リスクMDSに対して移植臓器の拒絶などの悪影響がなく,安全にアザシチジン(AZA)を投与することが可能で,血液学的改善が得られた2症例を経験したので報告する。1例目は肝移植後の74歳の男性である。免疫抑制療法として,シクロスポリンとプレドニゾロンを投与されていた。肝移植9年後,MDS(RCMD)と診断された。2例目は死体腎移植後の47歳の女性である。免疫抑制療法として,シクロスポリン,アザチオプリンおよびプレドニゾロンを投与されていた。腎移植27年後,MDS(RA)と診断された。両患者は,AZA治療(75mg/m2,5日間,28日間隔,点滴注射)を受けた。両者とも,2コース後にグレード3/4以上の非血液学的毒性を認めず,血液学的改善(国際ワーキンググループ2006年分類)が得られた。さらに,両患者に対するAZA治療は,移植臓器に対する拒絶などの悪影響を及ぼさなかった。固形臓器移植後に発症したMDSに対するAZA治療は,安全かつ有効である。しかしながら,真の安全性と有効性を確かめるために経過を長期間追跡することが必要である。(著者抄録)