早坂大亮; 藤原一繪
日本緑化工学会誌 32 2 346 - 354 日本緑化工学会 2006年11月
[査読有り] 今後の海岸管理・海浜植物群落保全に対する基礎資料を作成する事を目的とし,人為的活動,開発圧の強い湘南海岸に現存する植物群落(海浜・非海浜植物群落を含む)の成立に及ぼす影響について検討した。現地植生調査資料を相互に比較,整理した結果,現在,湘南海岸には,4クラス,9群集,6群落(上級単位不明の2群落を含む)が成立していた。土壌窒素含量,土質,1m^2あたりの平均海水浴客数および清掃頻度を用いて主成分分析を行った結果,オカヒジキクラス,ハマボウフウクラスよびハマゴウクラスは,人為的影響が弱い貧栄養地に,オオバコクラスおよび上級単位不明の群落は,細礫率が高く土壌窒素分の高い立地に成立傾向にあり,クラス間で明確な立地環境の違いが認められた。非海浜植物群落であるギョウギシバ群落およびコマツヨイグサ群落は湘南海岸全域で広く見られたが,コマツヨイグサ群落は攪乱強度の低い海岸前面の裸地に,ギョウギシバ群落は人為的攪乱により形成された裸地に侵入するというように,定着場所に明確な違いが認められた。これら群落の分布拡大は神奈川県内だけにとどまらず,人為的影響の強い様々な海岸で生じている。人間の利用地域と海浜植物群落の保護地域との明確な境界を引き,内陸生雑草の侵入経路である植被の隙間(植生の面的拡がりが,人為的攪乱によってパッチ状になること)を作らない事が有効であると考えられる。湘南海岸で見られる全植生単位が,平塚市および大磯町で網羅される事から,今後は,これら2市町を要保全地域として管理していく必要がある。