入江啓彰
近畿大学短大論集 48 1 1 - 11 近畿大学短期大学部 2015年12月
地域経済の現状を的確に捉えるためには, 客観的な経済統計の利用が欠かせない. なかでも域内総生産は当該地域の経済活動を包括的に捉えることの出来る経済統計である. しかし大阪府では, 大阪市を除いて府下市町村での域内総生産(市町村 GRP)の推計は行われていない. 本稿では, 他県での推計事例や先行研究を参考に, 独自に大阪府下の市町村 GRP の長期推計を行った. 推計結果から, 大阪府経済の長期低迷の主因は大阪市であること, 大阪市以外では, 府北東部の市は停滞しているが, 府南部の第二次産業比率の高い市町村が大阪経済を下支えしていたことがわかった. また推計結果を活用した分析事例として, タイル尺度により地域間格差を計測した. 大阪府の地域間格差は, 労働生産性でみると, 関西国際空港の開港に伴い急拡大したが, その後は縮小してきていることがわかった.