Japan Society for the Promotion of Science:Grants-in-Aid for Scientific Research Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
Date (from‐to) : 2019/04 -2022/03
Author : 石上 敬子
ドイツ法については、基本コンメンタールおよび2冊のDissertationを精読し、BGB310条1項についての基本資料を網羅的に収集し内容を整理する予定であったが、Dissertationの精読はひとまず措き、基本コンメンタールに基づく議論状況の整理を中心に取り組んだ。その結果、①ドイツでは1976年の約款規制法制定当時から事業者間契約にも約款規制が及ぶとされており、1987年には実務から強い批判があったものの、2002年の民法統合までは学説を中心とする賛成説が多かったこと、②2000年代後半頃から、ドイツ企業の国際的な競争力への悪影響と、学説でも批判が増加してきたこと、③2010年以降、主要コンメンタールの多くが批判説へと改定され、解釈論の修正および法改正の動きが活発化しつつあることや、判例も約款規制に謙抑的になってきたこと、が明らかになった。
以上の内容は、東北大学民法研究会において報告し、示唆を得た(論題「ドイツにおける約款規制の事業者間契約への展開・序論」、8月29日、東北大学川内南キャンパス 文科系総合研究棟1号館(教育学研究棟)11階 中会議室)。
日本法については、法状況の整理として、改正民法の定型約款規定に関する法制審の議論
の分析・論文をまとめ、前半部分を5月までに公表した(「定形約款規定の意義と射程(中)――法制審議会民法(債権関係)部会における実務をめぐる応酬――」大阪経済法科大学経済学論集42巻2号67-82頁(2019年5月))。