多田 昌裕 (タダ マサヒロ)
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現在建設が進められている大深度地下高速道路のジャンクションは,短い区間に急勾配,急カーブ,トンネル内分合流が集中する特有の道路構造を持つ.先行研究では,ランプに標識が設置できないことなどに起因して,連続する分岐の下流側の情報が不足し,分岐部に注意対象が集中することで,運転者の負荷が増加し,そのことが,分岐部での急減速を誘発するとの示唆を得た.本研究では,この課題の対策として標識のみに依存しない案内誘導方法であるカラー連携標示に着目し,室内走行実験から得られた車両および運転者の挙動を分析することで,課題に対するカラー連携標示の対策効果を検証した.その結果,カラー連携標示が運転者の進路認知のタイミングを早めること,それにより分岐部での運転者の負荷が減少し,急減速の要因が解消されたことを確認した.
本研究では,潜在的な事故リスクの評価を目標として,運転者の不安と不安全な走行傾向との関連性の分析を行った.ドライビング・シミュレータによる室内走行実験から,車両挙動に関するデータを収集した.さらに,毎走行後のヒアリングから,不安度に関するデータを収集した.不安度の変動は個人差が大きいため,不安度を基に行ったクラスター分析(Ward 法)から,被験者を 3 グループに分類した.分類結果を参考に,異なる道路の条件間において不安度が大きく変化していた被験者に着目した.その結果,ジャークの分散や,車両中心位置の車線中心からのずれの標準偏差から,不安と不安全な走行傾向との関連性を確認した.さらに,最大加速度から,部分的ではあるものの,不安全な走行傾向が不安全な行動の要因となる傾向を確認した.
筆者らは、装着型センサを用いて運転者の行動を計測・評価し、予防安全上の観点から改善すべき点があれば、リアルタイムに音声による安全アドバイスとして提供するシステムの提案・開発をしている。 本稿では、本システムを法定高齢者講習同等講習において試験的に用いることで、リアルタイムにアドバイスを提供することが行動改善にどのような効果をもたらすのか、検証を行った。公道上に設定したコースにおいて、高齢者 72 名をリアルタイムに安全アドバイスを提供した群 36 名と提供しない群 36 名の 2 群に分け、運転行動の改善効果について検証を行った。その結果、リアルタイムに安全アドバイスを提供した群の運転技能評価結果が提供しなかった群に比べて有意に高い結果となり、高齢者の運転行動の改善に一定の効果をもたらすことが明らかとなった。
本研究では,アイカメラを用いて高齢者 24 名,非高齢者 14 名の実交通環境下における運転行動を計測し,交差点右左折時や生活道路走行時など,複数の交通場面における高齢者と非高齢者の運転行動を比較した.その結果,高齢者は交通量が比較的多く,一度に確認しなければならない対象が多数存在する交差点を右折する場面や,生活道路の交差点クロスマークのない交差点を直進する場面において,安全確認回数が有意に少ない傾向が認められた.また,一時停止規制のある交差点進入に際しての減速時,高齢者は非高齢者よりもルームミラーの確認回数が有意に少なく,自車両後方に対する意識が少ないことが示唆された.以上に加え,高齢者は,道路上に設置された一時停止規制標識への視認回数が非高齢者よりも有意に少ないことが明らかとなった.