産業構造転換期における外国人労働者の社会包摂とエンパワメントに関する調査研究
日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(C)
研究期間 : 2018年04月 -2021年03月
代表者 : 荒川 一彦; 東郷 寛; 谷口 智彦
本研究の目的は、外国人労働者の社会包摂とエンパワメント(自律・活性化)、それを促進する組織構造・人事施策、企業・団体の成長可能性を明らかにすることにある。
本研究第2期(2018-2020)では、外国人労働者の企業現場、特に生産プロセスにおける組織社会化、自律的キャリア形成、促進する人事・教育の方策を検討している。同時に、産官学体制・施策の現状と方策について,送出国と受入国の間を往来する“循環的移民”に注目しつつ、明らかにする。こうした検討を通じて,外国人労働者が自身の置かれた現状に対する認識の変化(「意識化」)(Freire, 1982)を達成し、自律的キャリア形成を遂げる状況と、エンパワメントを通じて、受け入れ側の組織、さらには送出国・受入国の社会・産業が活性化する方途を検討している。
2019年度は、初年度で収集したデータの検討・研究、さらに、地域の非営利団体への拡充、外国人労働者の送出国・受入国における教育実践を通じた知見・研究の深化させた。
具体的には、東郷は、「エンパワメント」概念研究を、理論研究を進展させつつ、地域における非営利組織の経営・人事・組織戦略の検討へと拡大し、複数の視点から実態調査を行い、研究を進展させた。谷口は、派遣・委託会社との継続的関係を活用し、前年度までの日系ブラジル人労働者へのアンケート調査をもとに統計分析を行い、その組織適合(キャリアの成功と定着率)に関する量的検討を行った。その内容は、第22回組織行動科学学会大会で報告され、大会優秀論文賞を受賞している。荒川は、「循環的移民」研究に注目し、2020年初に行った在ベトナムの日系企業・機関への現地調査の検討、企業との連携、現地大学との教育交流通じて、(潜在的/顕在的)外国人労働者の研究を進展させている。こうした成果は2回の研究会で共有され、一部は中間報告として学会で報告された。