電気を食べる微生物でバイオものづくりの新地平を拓く
日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(B)
研究期間 : 2018年04月 -2021年03月
代表者 : 木村 善一郎; 村上 克治; 松鹿 昭則
遂行予定の研究全体像は、電気を食べる微生物(電極酸化細菌)を用いたバイオリアクターで廃棄物処理・有価物生産同時プロセス(電気発酵)の構築を目指すものである。本装置は電気化学的培養装置であり、電極還元細菌と電極酸化細菌の二種類の微生物群が電極・導線を通じ電子をやり取りして物質生産を行う。本技術の特徴は最終電子受容を行う電極酸化細菌(純菌)を陽極に隔離し、エサを電流のみに制限することで廃水(廃棄物)を原料に高付加価値物質(化学品・医薬品など)を生産しうるという点であり、本研究の目的は電気をエサに様々な有価物を生産可能な微生物触媒である電極酸化細菌を育種するために、新興ゲノム編集技術であるCRISPR/Cas9を用いて当該細菌への遺伝子導入すること及び、その導入遺伝子資源を網羅的に獲得すること、さらには遺伝子導入による新規物質生産システムを構築することの3点である。
平成30年度は(1)電極酸化物質生産システムの構築、(2)固相電気培養システムによる新規遺伝子資源の獲得及び(3)CRISPR/Cas9による組換え系の構築に取り組んだ。(1)では既知電極酸化細菌である好熱菌Moorella sp. Y72株を用いて酢酸を生産する物質生産系の構築に成功した。(2)の取り組みでは平成30年度までに固体培地上で電極酸化細菌と考えられる細菌の優占的培養に成功した。今後分離株を用いたゲノムシーケンスに取り組んでいく。(3)ではY72株を用いて、当該株のゲノム内にCas9をはじめとするゲノム編集関連遺伝子の導入に取り組み、導入及び発現に成功した。今後Cas9によるゲノム切断の効率を高めるため、最適な発現・反応条件を検討していく。