朴忠勇; 能宗伸輔; 川畑由美子; 山内孝哲; 馬場谷成; 原田剛史; 廣峰義久; 伊藤裕進; 村田佳織; 武友保憲; 貫戸幸星; 當間純子; 末吉功治; 吉田左和; 大磯直毅; 川田暁; 池上博司
近畿大学医学雑誌(Medical Journal of Kinki University) 38 3,4 107 - 114 近畿大学医学会 2013年12月
[査読有り] [抄録]目的: 円形脱毛症患者における甲状腺自己免疫および膵島自己免疫の臨床的・遺伝的実態を明らかにする. 方法: 円形脱毛症患者110例について臨床的特徴および自己免疫疾患の合併率を検討し, 血清学的に抗サイログロブリン(Tg)抗体, 抗甲状腺ペルオキシダーゼ(TPO)抗体, 甲状腺刺激ホルモン受容体抗体(TRAb)抗glutamic acid decarboxylase(GAD)抗体, 抗insulinoma-associated antigen2(IA-2抗体), インスリン自己抗体(IAA)を測定した. またHLA-DRB1, -DQB1, -A, -B, -C 遺伝子型を決定した. 結果: 円形脱毛症患者は健常対照者に比し, 抗Tg抗体, 抗IA-2抗体, IAA, 抗GAD抗体陽性率は同等であったが, 抗TPO抗体(29.1% vs. 11.6%, P<0.001), TRAb(42.7% vs. 1.2%, P<0.001)の陽性率は有意に高値を示した. 膵島関連自己抗体価の比較では抗GAD抗体, 抗IA-2抗体, IAAはいずれも健常対照者との間に差を認めず, 自己免疫性甲状腺疾患患者に比し有意に低値であった. 遺伝子解析において円形脱毛症患者は健常対照者に比し, A, 33: 03 が有意に低頻度であり(3.2% vs. 9.7%, Pc=0.036), DRB1, 04: 05 -DQB1, 04:01 は低頻度の傾向, DRB1, 15: 01-DQB1, 06: 02 は高頻度の傾向を示した. 結語: 円形脱毛症には甲状腺自己免疫を高率に合併するが, 膵島自己免疫・1型糖尿病の合併は稀であること、遺伝子解析でも円形脱毛症では1型糖尿病の疾患感受性ハプロタイプが低頻度、疾患抵抗性ハプロタイプが高頻度であるという今回の結果から、円形脱毛症が自己免疫性甲状腺疾患とは共通性を有するのに対し、1型糖尿病とは臨床的にも遺伝的にも異質性を有することが示唆された.