ウィリアム・ギルピンの『湖水地方紀行』と「ピクチャレスク」の概念
岩井 茂昭
生駒経済論叢 15 1 127 - 142 2017年07月
ウィリアム・ギルピンは1768年に『版画論』を出版した後,1769年からイギリス各地への旅行に出発し,その記録は後に一連の紀行文として出版された。1786年に出版された『湖水地方紀行』は1772年に行われた湖水地方への旅行にもとづいた紀行文である。ギルピンが『版画論』の中で展開したピクチャレスク美学は人工的創作物である版画を題材としたものであったが,その理論を自然風景の鑑賞に当てはめるにあたり,ギルピンは“picturesqueeye”という考え方と“imagination”を重視している。本論ではこれらの言葉に注目して,ギルピンによるピクチャレスク美学と風景描写の関係について考察する。