日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(C)
研究期間 : 2018年04月 -2022年03月
代表者 : 吉田 忠彦; 金川 幸司; 山田 雄久; 東郷 寛; 後 房雄; 團 泰雄
2020年度はコロナ感染拡大予防のためフィールド調査がほとんど実施できなかったため、本来は最終年度であったが、延長申請をすることになった。
しかし、これまでの調査をベースとしていくつかの成果を発表した。まず、さまざまな地域活動などを実施する団体を支援するいわゆる「中間支援組織」と、行政の市民活動支援施設との関係について、神奈川県の県民活動サポートセンターをめぐるケースについて学会報告したものを論文にまとめ、査読を経て学会誌に掲載した。詳細なケースの記述をベースにし、分析視角としては「アクターネットワーク理論(ANT)」を用いた。これによって、中間支援組織や行政の施策が、物理的な建物、新しい法制度などと相互作用している様子が分析できた。複雑な相互作用をいたずらに単純化するのではなく、むしろこれまで主なアクターによって操作される対象として扱われるだけだった物理的な建物などもまたアクターとして捉えることで、より現実的な説明が可能となった。地域活動や市民活動を支援する事業は、物理的な場の有無、その場の利便性、そしてNPO法成立を背景とした支援メニューへの利用者の期待などが影響し、それは自治体などの設置者の最初の制度設計の修正も導くことが観察できた。
また、NPO支援組織における人的資源管理についての調査をまとめ、イギリス経営学会のオンラインでのフォーラムで報告を行った。こちらもレフリー付での採択である。ここでは兵庫県の中間支援組織でのスタッフの異動のパターンなどを分析対象とした。兵庫県は1995年に発生した阪神・淡路大震災の被災地として、ボランティア活動や市民活動の重要性が自治体にも市民にも認識された地域であったことから、NPOや中間支援組織が早くから発達した。特に中間支援組織はたの地域に比べて数も多く、それぞれ存続している点も注目される。