純国産ゲノム編集技術を基軸とした薬用キノコ霊芝の機能性ビルドアップ研究
日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(B)
研究期間 : 2017年04月 -2020年03月
代表者 : 清水 邦義; 中村 崇裕; 大貫 宏一郎; 松本 雅記
昨年に引き続き、霊芝の細胞融合・ゲノム編集を効率的に行うための扱い易いプロトプラスト作成に向けての検討を行った。これまでの研究で、形質転換に用いるプロトプラストの性状が形質転換効率に影響することが示唆されたため、本年度は作出したプロトプラストをセルソーターにより分画した。その結果、異なるサイズのプロトプラストを得ることに成功した。また、我々はこれまでに、トリテルペノイド以外の霊芝二次代謝産物であるβ-グルカン合成に関わる遺伝子の探索を行った。このβ-グルカン合成遺伝子をPPRモチーフによるゲノム編集技術を用いてノックアウトすることでトリテルペノイド産生が増加する可能性が考えられる。
霊芝(Ganoderma lingzhi)に含まれるトリテルペノイドおよび多糖は、その薬効成分に寄与する主要な生理活性成分である。本研究では、G. lingzhiに含まれるトリテルペノイドの網羅的な分析条件の検討を行った。2017年度は標準品を用いた定量方法を確立し、生育ステージ毎の18種類のトリテルペノイド類を定量した。本年度は質量分析に基づく生育段階におけるG. lingzhiのノンターゲットメタボロミクス分析の方法を検討した。検出された42のピークのうち、26のピークを同定した。そのうち9のピークは標準品より同定し、17のピークは本研究により得られたマススペクトルの開裂と既報の結果から化学構造を推定した。各ピークのピーク面積を比較し、半定量が可能な分析方法を確立した。本結果は今後ゲノム編集によってトリテルペノイド生産能力の高い霊芝を作出した後に、ゲノム編集されていない霊芝と比較してどのような種類のトリテルペノイドが増加しているかを確認するために有効な手段となる。。