松本 幸三 (マツモト コウゾウ)
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本研究では優れた耐熱性が期待できるベンゾオキサジン-脂環式エポキシ共重合体を150 ℃,3 時間で完全硬化することを目標に種々の重合促進剤を検討し,それらの重合挙動や共重合体の熱的物性を評価した。検討の結果,Yb(OTf)3 を用いた場合0.1 mol%の添加量でベンゾオキサジンの重合温度を20 ℃低下させ,150 ℃,3 時間の重合においてベンゾオキサジンの重合促進効果が最も高いことが分かった。
種々のアリールメチルピリジニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートを合成し,エポキシ樹脂に対するカチオン型の熱潜在性硬化剤としての性質を検討した。アリールメチルクロリドとシアノピリジンからアリールメチルピリジニウムクロリドを調製し,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートナトリウム塩とイオン交換を行うことで,ピリジニウムボラート塩を合成した。得られたピリジニウムボラート塩をビスフェノールA ジグリシジルエーテル(BAGE)および2 官能性脂環式エポキシ(セロキサイド)に添加し,示差走査熱量分析(DSC)により触媒活性を評価した。またピリジニウムボラート塩を含むエポキシ樹脂の室温一ヶ月経過後の貯蔵安定性をプロトン核磁気共鳴スペクトル(NMR)測定により調べた。その結果,p- メトキシベンジル-3- シアノピリジニウムボラート塩(pMB3CPB)が高い重合活性と優れた貯蔵安定性を有することが分かった。さらにpMB3CPB で硬化したBAGE は,既存のスルホニウムアンチモナート硬化剤で硬化した樹脂よりも高いガラス転移温度とステンレスへの強い接着強度を持つことが分かった。
架橋ポリスチレンと液状ポリブタジエン混合系の二成分混合材料を種々の方法で調製し,その形状ならびに熱転移挙動について検討を行った。架橋ポリスチレン/液状ポリブタジエン混合物(重量比1/1)を両ポリマーのジクロロメタン溶液から40 ℃で減圧濃縮して調製した場合は,固体ポリマーと液状ポリマーの明らかに相分離した材料が得られた。この材料を示差走査熱量分析(DSC)により分析したところ,液状ポリブタジエン単体のガラス転移温度(Tg)(-91.0 ℃)と架橋ポリスチレン単体のTg(103.1 ℃)によく一致する二つのTg が観測された。一方,同様の架橋ポリスチレン/液状ポリブタジエン混合物(重量比1/1)を両ポリマーの1,4- ジオキサン溶液中から凍結乾燥して調製した場合には,パウダー状の固体材料のみが得られた。さらに,この材料のDSC 分析では,ポリブタジエンに由来するTg が高温側にシフトして-88.8 ℃に,架橋ポリスチレンに由来するTg が低温側にシフトして97.8 ℃に観測された。このことから,これらのポリマーの混合物から混合方法により性状の大きく異なる材料が得られることが明らかとなった。