大久保 麻希; 坂本 万寿夫; 岩橋 千春; 日下 俊次
あたらしい眼科 (株)メディカル葵出版 40 (3) 389 - 394 0910-1810 2023/03
目的:Vogt-小柳-原田病(以下,原田病)類似の眼病変で発症したメトトレキサート(MTX)関連リンパ増殖性疾患(MTX-LPD)の症例を報告する.症例:68歳,男性.両眼視力低下と眼瞼腫脹を自覚し眼科受診,初診時視力は右眼(0.15),左眼(0.2),両眼結膜浮腫,前房内炎症,脈絡膜肥厚,右眼漿液性網膜剥離を認めた.同時期より間欠性の発熱や頸部リンパ節腫脹などがみられたこと,血清sIL-2R 36,478U/ml,前房水IL-10/IL-6>1より,リンパ腫病変を疑い頸部リンパ節生検を施行した.びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫であり,また,3年前に発症した関節リウマチに対して3ヵ月前よりMTXの内服が開始されていたことより,MTX-LPDと診断した.MTX休薬を行うも全身症状が悪化したため,初診2週間後よりR-CHOP療法を施行,治療開始4週間後には両眼とも視力(0.9)となり,眼炎症所見は速やかに改善した.しかし,4ヵ月後に中枢神経病変を認め,R-MPV療法を施行するも中枢神経病変増悪のため発症7ヵ月後に死亡した.経過中,眼所見の再発はみられなかった.結論:MTX-LPDに原田病類似の眼所見を伴う可能性がある.(著者抄録)