日本学術振興会:科学研究費助成事業
Date (from‐to) : 2018/04 -2023/03
Author : 井原 健太郎
本研究では, 多重ゼータ関数の理論をモデルとして, 従来の保型形式に付随する L-関数の理論の「多重化」を構築することを目標にしている. その重要な課題 として, 保型多重L-関数 の正整数点における特殊値「保型多重L-値」の生成する代数「周期代数」の構造を決定する問題を考える. 本研究では, 多重ゼータ理 論で大きな役割をもつDrinfeldアソシエーターと多重ポリログをモデルにして,「保型版アソシエーター」と「保型多重ポリログ」を新たに導入することで,「周期代数」の構造を解明しようと考えている. 本年度の研究実績として, 近畿大学のY. Nakamura Y. Kusunoki, H. Saekiとの共同研究として論文「Generating function of multiple polylog of Hurwitz type」を執筆し, 専門誌に投稿した。この研究は、Y. Ohno, D. Zagierによる多重ポリログの母関数が満たす微分方程式の研究を基に, 多重ポリログをHurwitz型多重ポリログへと拡張した結果である. また, 多重ゼータ値のある種の補間関数の積分表示を与えた研究(Y. Nakamura, S. Yamamotoとの共同研究)を進め, 論文「Integral representation of interpolant of multiple harmonic sum」を準備中である. また, 近畿大の石橋大生氏との共同研究として. 多重ポリログ関数のメリン積分表示についての結果が, 近畿大学理工学総合研究所紀要「Science and Technology」に掲載された. 保型形式の多重L値の研究として, 関連するF. Brownの最近の研究結果に関するセミナーを開き, 周期間の関係式やアソシエーターの構成に関する議論を行った.