日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(B)
研究期間 : 2020年04月 -2023年03月
代表者 : 鬼丸 武士; 岡田 友和; 吉田 信; 鈴木 英明; 堀内 隆行; 長田 紀之; 鈴木 伸二
本研究は、19世紀末から20世紀初頭のアジア、アフリカ地域の植民地において、治安秩序維持と公衆衛生上の、反植民地運動の活動家や感染症を引き起こす病原体といった「不可視」の脅威に対して、予防を目的とした監視がどのようにおこなわれていたのかを、植民地域内での予防と監視の実態の解明と、境界を越えて移動するヒトに対する予防と監視のネットワークの解明の二つの側面から明らかにすることを目的としている。
この目的を達成するために、本研究は(1)先行研究のサーベイと分析、(2)各国公文書館での史資料調査、(3)収集した史資料やデータの整理と分析、(4)国内定例研究会や
国際ワークショップでの調査・分析結果の共有と検討、(5)研究成果の公開と発信、の5つのプロセスで遂行する。
本年度は関連する先行研究の収集と分析、個々の研究参加者が所蔵する資料の内、本研究に関連する資料の洗い出しと分析を中心に研究を実施した。その成果としては、アジアを中心とした植民地における公衆衛生や医療の展開については研究蓄積があるものの、監視に注目した研究はほとんど見られないこと、警察については先行研究がそもそも少なく、資料についても利用できるものに限界があること、移動するヒトへの予防と監視のネットワークについては、現状ではほとんど研究が行われていないに等しいことなどが明らかになった。この成果は2021年3月に大阪で開催した研究会で共有した。また今後も新型コロナ・ウィルスによるパンデミックが継続することを鑑み、日本国内を対象にした研究をおこなうことについても検討し、実際に小樽や横浜、長崎でのサーベイランス活動に関する予備調査をおこなった。