工藤 正俊 (クドウ マサトシ)
|
1978年 京都大学医学部卒業
1999年 近畿大学医学部消化器内科教授
2008年 近畿大学医学部附属病院病院長
2015年 学校法人近畿大学理事
【背景と目的】超音波内視鏡下胆道ドレナージ術(Endoscopic ultrasound-guided biliary drainage;EUS-BD)には,endoscopic ultrasound-guided choledochoduodenostomy(EUS-CDS)およびendoscopic ultrasound-guided hepaticogastrostomy(EUS-HGS)の2つのアプローチ方法が存在する.本研究は,悪性胆道閉塞に対するこれらの2つの手技の有効性と安全性を比較検討した前向き無作為化試験である.
【方法】ERCPが不成功であった悪性遠位胆道閉塞を有する患者を対象とし,EUS-CDS群およびEUS-HGS群に無作為に割り付けた.本研究は,2013年9月から2016年3月の期間に国内の高次医療機関9施設で行われた.主要評価項目は手技成功率とし,片側有意水準5%,非劣性マージンを15%と設定し,EUS-HGSのEUS-CDSに対する非劣性を検討した.副次的評価項目は,臨床的成功率,偶発症発生率,ステント開存期間,生存時間,および初期治療,二次治療を含めたEUS-BDの手技成功率とした.
【結果】EUS-HGS群:24例,EUS-CDS群:23例の計47症例が登録された.手技成功率は,EUS-HGS群およびEUS-CDS群で,各々87.5%,82.6%であり,リスク差の90%信頼区間の下限は12.2%であった(P値=0.0278).臨床的成功率は,EUS-HGS群およびEUS-CDS群で,各々100%,94.7%であった(P値=0.475).偶発症発生率,ステント開存期間,生存期間には両群で差がなかった.EUS-BDの二次治療を含めた全体での手技成功率は,EUS-HGS群およびEUS-CDS群で各々100%,95.7%であった(P値=0.983).
【結語】本研究により手技成功に関してEUS-HGSのEUS-CDSに対する非劣性が示された.いずれかの手技が困難な場合,他のEUS-BD手技に切り替えることが手技成功を高めることにつながる可能性がある.
【背景と目的】本研究では,造影ハーモニック超音波内視鏡(contrast-enhanced harmonic EUS:CH-EUS)を併用した超音波内視鏡(endoscopic ultrasonography:EUS)による精査が膵管内乳頭粘液性腫瘍(intraductal papillary mucinous neoplasm:IPMN)に対する外科的切除後の残膵フォローアップに有用であるかを検討した.
【方法】本研究は,単一施設で行われたレトロスペクティブな研究である.2009年4月から2015年3月までにIPMNに対して外科的切除が施行された計134人の患者を対象とした.フォローアップ中における再発率とIPMN併存膵癌の発生率を検討した.また,それらの患者の臨床所見についても検討した.
【結果】134例のIPMNのうち56例(41.8%)が良性,78例(58.2%)が悪性であった.経過観察期間中央値は29カ月であった.33例(24.6%)に対して,造影剤増強コンピュータ断層撮影法(contrast-enhanced computed tomography:CE-CT)にEUSを併用しフォローアップを行った.一方,101例(75.4%)はCE-CTのみによりフォローアップを行った.再発は13例(9.7%)に認め,うち5例が膵内再発,8例が膵外転移であった.1例において,拡張した主膵管内における造影効果のある壁在結節がEUSのみで描出された.2例において,フォローアップ中にIPMN併存膵癌が発生した.それらは小病変であり,CH-EUSでは検出されたが,CE-CTでは検出されなかった.うち1例においては,EUSでは腫瘍が不明瞭であり,CH-EUSが腫瘍の描出に有用であった.
【結語】IPMN切除後フォローアップにEUSを加えることが有用であることが示唆された.
【背景と目的】孤立性胆嚢病変の鑑別診断は課題が残されている.本研究の目的は,胆嚢孤立性病変に対する造影ハーモニックEUS(CH-EUS)の有用性を評価すること.
【方法】2007年3月から2014年2月までの間に,孤立性胆嚢病変を有する125人の患者に対してCH-EUSを施行し,レトロスペクティブにCH-EUSの有用性を検討した.はじめに,胆嚢病変と胆泥の鑑別診断能に関して,通常のBモードEUS(FB-EUS)とCH-EUSを比較検討した.その後,良悪性鑑別に対する診断能を両検査間で比較検討した.CH-EUSのVascular imageおよびPerfusion imageにおける血流パターンを5人の医師によるブラインドリーディングにて評価した.
【結果】胆嚢病変と胆泥の鑑別診断能に関して,FB-EUSの感度は82%,特異度は100%,正診率は95%であった.一方,CH-EUSの感度は100%,特異度は99%,正診率は99%であった.良悪性鑑別に関して,腫瘍の大きさあるいは形状に基づいて診断した場合のFB-EUSの診断感度は61-87%,特異度は71-88%,正診率は74-86%であった.CH-EUSにてVascular imageにおけるirregular vessel patternあるいはPerfusion imageにおけるheterogeneous enhancementを悪性所見とした場合の診断感度は90%,特異度は98%,正診率は96%であり,FB-EUSの診断能と比較し有意に良好であった.
【結語】CH-EUSは,孤立性胆嚢病変の鑑別診断において有用である.
This study attempted to identify appropriate materials for restoration of enamel defects in the primary dentition, which were classified by severity and region with the modified developmental defects of enamel index. To identify the most appropriate materials, we used restorative materials to protect teeth and evaluated clinical outcomes of restoration. Three materials were used for restoration or repair after dislodgement of restorations. Our findings in this case suggest that, because of its durability and esthetic advantages, adhesive resin is beneficial for patients with enamel defects, particularly for restorations of less than two-thirds of the extent of the defect.
膵癌早期診断におけるEUSの果たす役割は近年大きくなりつつある.リスクファクターを有する症例や膵管内乳頭粘液性腫瘍の精査あるいは経過観察にEUSを用いることによって実際に早期膵癌が発見されたとする報告が数多くみられる.EUS機器の進歩,EUS-FNAの普及によって膵癌の存在診断・質的診断能は確実に向上してきている.本稿では,膵癌,特に小膵癌の存在診断におけるEUSの役割について解説する.
超音波内視鏡下胆管ドレナージ術は,ERCPが困難な胆道閉塞症例における代替の胆管減圧法として近年,大きな注目が集まっており,ここ数年の間に多数の論文が発表されている.様々な手技の方法が報告されているが,主な穿刺ルートとして,胃から経肝的に肝内胆管にアプローチする方法及び十二指腸から肝外胆管にアプローチする方法に大別され,ステンティングの方法では,経消化管的ドレナージ術,ランデブー法および順行性ステンティング術の3通りの留置法がある.閉塞部位やスコープの乳頭部到達可否等の状態に応じて,穿刺ルート,ステント留置法を決定する必要がある.手技成功率および偶発症発生率は手技の方法や報告により異なるが,最近の1192例のメタ解析では,手技成功率94.7%,偶発症発生率23.3%と報告されている.今後の専用処置具の開発により,近未来には,より安全で確立した治療法となり得る可能性がある.