日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(B)
研究期間 : 2017年04月 -2021年03月
代表者 : 石川 義孝; 山下 清海; 高畑 幸; 福本 拓; 竹下 修子; 片岡 博美; 花岡 和聖
交付申請書で述べた2018年度の研究実施計画は、1)既往研究のレビュー、2)外国人の居住地の調査、3)外国人地図帳の刊行準備、の3点であった。
1)については、移民の集住地やセグリゲーションに関する、主に米国における既往文献のレビュー作業を行った。とりわけ、科研の研究課題に登場している空間的同化論とヘテロローカリズム論に焦点を置いたが、同国における集住地形成に関する新しい枠組みの誕生には、1965年の移民法改正による移民の多様化という事態が重要なことが明らかになった。このレビュー論文は、2019年度中に刊行の予定である。
2)については、国内における外国人の居住地選択や集住地形成に関する調査を継続した。具体的なエスニック集団として、韓国・朝鮮、中国、フィリピン、ブラジル、トルコの5国籍の在留外国人を対象に、国内での集住地形成やその変化を検討するとともに、それらを促す要因を、空間的同化論やヘテロローカリズム論の日本での経験的妥当性を念頭に置きつつ、考察した。
3)については、2011年3月に刊行した石川義孝編『地図でみる日本の外国人』(ナカニシヤ出版)の改訂版の刊行のために、政府統計の総合窓口から入手可能な外国人データや、総務省統計局から提供いただいた2015年国勢調査の外国人個票データも使って、最新データによって更新した地図を作成した。さらに、新たに2項目を追加して、この地図帳の改訂版を2019年1月に刊行した。初版と比較すると、わずか8年しか経過していないにもかかわらず、世界経済危機や地方圏での労働力不足の深刻化などを反映した、様々な興味深い知見を得た。
4)以上の他に、2018年9月28日に、福岡で開催された世界社会科学フォーラムにおいて、「移民の社会的包摂の現状」と題するセッションを持ち、本科研によって内外から招聘した4名が発表を行った。