島 吉伸; 安酸 建二; 梶原 武久
商経学叢 53 3 365 - 390 近畿大学 2007年03月
本研究の大きな目的は,日本企業における品質マネジメントの有効性を検討することにある。本稿はその手がかりとして,近年多くの日本企業が取得を進めてきたISO9000に注目する。ISO9000は品質マネジメントに関する国際規格であるが,その認証取得に対する有効性については否定的な見解もあり,特に日本においてはその効果が逸話的に語られることが多く,これまで実証されてこなかった。そこで本稿では,2000年から2001年にかけてISO9000の認証を初めて取得した企業をサンプルとして,公表財務データを利用したイベントスタディを実施し,ISO9000認証取得が日本企業の財務業績を向上させるのかを検証した。結果として,ISO9000認証取得は,一時的な売上高の増加が見られるものの,長期的な競争力の獲得をもたらしておらず,財務業績を低下させる傾向があることが示された。